この記事の要点
- Swift プロジェクトのコミュニティ運営体制が再編され、これまで「team」と「workgroup」が混在していた呼称が group(グループ)に統一されました。グループは、戦略的な方向付けを担う steering group(ステアリンググループ)と、特定領域の作業を進める workgroup(ワークグループ)の 2 階層に整理されます。
- インクルージョンとダイバーシティを Diversity in Swift ワークグループだけの責務とせず、すべてのグループに組み込みます。各グループは持ち回りの「Diversity in Swift champion」を置き、Diversity in Swift の活動を各グループの charter(チャーター)に取り込んでいきます。
- 成長する Swift エコシステムとコミュニティを支えるため、新たに Ecosystem Steering Group と Contributor Experience Workgroup の 2 つのグループが設けられます。
何が変わるのか
グループの 2 階層化と名称の整理
Core Team を除き、コミュニティの各グループは一貫して group と呼ばれるようになります。各グループは明確な charter と焦点を持ち、より小さな単位として subgroup(サブグループ)を持つこともできます。グループは次の 2 種類に分かれます。
- Steering group: 広い領域での全体的な戦略の方向付けや、コミュニティ全体に関わる必要なプロセスに責任を持つグループです。
- Workgroup: プロジェクトの機能的な領域を表し、特定領域の作業を継続的に推進するグループです。各分野で活動するコントリビューターが運営を主導します。
ワークグループはコントリビューターの活動を支える仕組みの 1 つにすぎず、Swift への貢献はワークグループ以外の形でも始められます。多くの貢献は自然発生的に始まり成長し、十分な勢いと規模に達して Swift プロジェクトからの支援が有益になった段階で、その取り組みのためのワークグループを作る、という位置づけです。
なお、Swift Evolution プロセスで言及される evolution workgroup は、その charter を達成するために Swift Evolution プロセスを活用・管理するグループを指し、steering group・workgroup のどちらの形でもあり得ます。
新しい用語に合わせて、既存のグループ名も次のように調整されます。
- Language Workgroup → Language Steering Group。引き続き Swift Evolution プロセスを通じて言語の進化を主導します。
- Server Workgroup(「Swift on Server Workgroup」とも呼ばれます): サーバーアプリケーションの開発・デプロイでの Swift 利用を推進します。
- Documentation Workgroup: Swift のドキュメント体験を導きます。
- Website Workgroup:
swift.orgWeb サイトの進化を導きます。 - C++ Interoperability Workgroup: Swift と C++ の相互運用サポートを構築・前進させます。
これらのグループを統括するのが Swift Core Team です。「group」用語への変更も検討されましたが、長く使われ広く認知されている名称のため「team」のまま維持されます。Core Team は、コミュニティの各グループや取り組みに一貫性と戦略的な整合をもたらす存在です。意思決定は投票ではなく合意(consensus)によって行われ、議論の収束が必要な場合は Project Lead が調整に入ります。
Diversity in Swift の全グループへの展開
Diversity in Swift ワークグループは、メインの Swift コードベース以外での貢献の道筋を作り、新しい声をコミュニティに迎える取り組みを進めてきました。コミュニティが執筆するブログ記事のプロセス、Swift Mentorship Program、Women in Swift・Black in Swift・Pride in Swift といったコミュニティグループなどがその成果です。
今回、インクルージョンとダイバーシティを Swift プロジェクトの日々の運営に根付かせるため、これらを Diversity in Swift ワークグループ単独の責務から、プロジェクト全体で共有する責務へと広げます。各グループは、持ち回りの新しい役割である Diversity in Swift champion を 1 名指名します。各グループの champion は連携し、それぞれのグループが Swift Mentorship Program などの取り組みに参加するよう促し、新たな施策を立ち上げ、インクルージョンとダイバーシティについてコミュニティが議論できるフィードバックの場を提供します。
Diversity in Swift ワークグループの既存メンバーと施策は他のグループに分散され、各グループの charter に取り込まれます。今後新設されるグループは、Diversity in Swift champion を指名し、charter の中でインクルージョンの理念をどう守るかを示すことが求められます。
新グループの発足
今後数週間のうちに、勢いの増している領域を支えるため、次の 2 つのグループが追加されます。
- Ecosystem Steering Group(新設のステアリンググループ): 開発者体験と生産性を支える周辺の仕組みを Swift について育てることに注力します。開発・ドキュメントツール、
swift.orgWeb サイト、パッケージマネージャ、パッケージエコシステムの進化を支援し、Swift の新しいプラットフォームへの移植やそのためのツール、クラウドベースの IDE・CI といった業界標準の生産性ツールでの Swift の普及も後押しします。charter の詳細は後続の発表で示され、その後、charter 内の具体的な取り組みを推進するワークグループ群が編成される予定です。発足メンバーは Core Team が選定します。 - Contributor Experience Workgroup(新設のワークグループ): オープンソースの Swift コミュニティへの新しい参加経路を作ることに注力し、Swift Mentorship Program やコミュニティグループの運営を担います。コード・バグ報告・Swift Forums での議論などへの貢献に関するプロセスやドキュメントの改善が、想定される取り組みの例として挙げられています。これにより Diversity in Swift champion はダイバーシティそのものに集中でき、Contributor Experience グループがあらゆる形の貢献を支援する形になります。
背景
Swift プロジェクトでは、これまで「team」と「workgroup」という言葉が、コミュニティの取り組みや責任領域を表す語として明確な区別なく使われてきました。Server APIs ワークグループに始まり、Diversity in Swift、Language Workgroup、Documentation Workgroup、Website Workgroup と、特定領域に集中するグループが増え、Swift の開発者エコシステムとコミュニティが拡大する中で、グループの種類と役割を整理し、ダイバーシティを全体で支える体制へと進化させる必要が高まっていました。今回の再編は、こうした流れを受けたものです。
参加・利用者への影響
この記事は、Swift コミュニティに関わりたいと考えているすべての人に向けたものです。グループの呼称と階層が整理されたことで、どのグループがどの領域に責任を持つのかが分かりやすくなりました。日々 Swift を使う開発者にとって直接の影響は大きくありませんが、ツール・ドキュメント・パッケージエコシステムを支える Ecosystem Steering Group や、貢献の入口を整える Contributor Experience Workgroup が新設されることで、コミュニティへの参加や貢献がしやすくなることが期待されます。
関わってみたい場合は、各グループの charter やプロジェクトへの貢献方法を確認するとよいでしょう。今後は四半期ごとに Contributor Meeting シリーズも開催される予定で、詳細は Swift Forums で案内されます。