この記事の要点
- 「What’s new in Swift」連載の2026年6月号で、WWDC26 での発表を中心に、注目の動画、コミュニティの話題、新しいパッケージのリリース、そして Swift Evolution の動きを取り上げています。
- 冒頭のゲスト寄稿では、WWDC と同じ週に開催されるコミュニティ主催カンファレンス CommunityKit と、通年でつながりを保つオンライン meetup iOSDevHappyHour の主催者が、今年のイベントの様子を紹介しています。
- WWDC26 では、OS カーネルの一部を Swift で書き始めていることや、Swift 6.4 のプレビュー(最大4倍高速な URL パース、
deferブロック内での async コード対応など)、QUIC 実装や Foundation Models framework 関連の OSS 化などが発表されました。 - Swift Evolution では、非同期処理に絶対時刻の締め切りを与える
withDeadline(SE-0526)、コピーせず値を貸し出す yielding accessor(SE-0474)、標準ライブラリへのFilePath追加(SE-0529)、non-copyable な配列型(SE-0527)が紹介されています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
この号は公式の定期ダイジェストなので、ここでは Swift 利用者が押さえておくとよい注目トピックを選んで整理し、Swift Digest 内外の関連リンクを示します。網羅的な一覧は元記事を参照してください。
注目トピック
コミュニティイベント(ゲスト寄稿)
今月は、WWDC と同じ週に開催されるコミュニティ主催カンファレンス CommunityKit と、月次のオンライン meetup iOSDevHappyHour の主催者によるゲスト寄稿から始まっています。今年の CommunityKit には250人以上の開発者が集まり、アプリを披露する Indie Fair、基調講演をみんなで見る Watch Party、週の締めくくりのポストカード作りといった催しが行われました。今年は Paul Hudson 氏による Swift 向けワークショップ「Write Faster, Smarter Swift」なども新たに加わったとのことです。
WWDC26 のハイライト
WWDC26 で Apple は Swift の採用状況を更新し、新たな Swift 関連の発表を行いました。
- OS カーネルへの Swift 採用: Platforms State of the Union で、今後のリリースに向けてコア OS カーネルの一部を Swift で書いていることが明かされました。
- Swift 6.4 のプレビュー: What’s new in Swift セッションで、最大4倍高速な URL パースや、
deferブロック内での async コード対応など、Swift 6.4 で予定されている変更が紹介されました。 - ネットワーク実装の OSS 化: Apple のネットワークスタックの QUIC トランスポート層が Swift で書き直され、swift-nio-quic として OSS 化されました。SwiftNIO と統合してクロスプラットフォームで利用できます。
- Foundation Models framework 関連: LLM を扱うためのツール(カスタム skill やコンテキスト管理のヘルパーなど)を集めた Swift パッケージ foundation-models-utilities が公開されました。Foundation Models framework 自体も将来 OSS 化され、アプリで使う API がサーバー上でも動かせるようになる見込みです。
- Container Machine: Mac 上に軽量で永続的な Linux 環境を提供する新ツール Container Machine が発表されました。アプリを単位とするコンテナと異なり、ホームディレクトリや設定を含むホスト環境そのものを共有する点が特徴です。Swift 製で OSS です。
注目の動画
- Build real-time apps and services with gRPC and Swift: ゴーカートリーグのライブデータを使い、iOS アプリと gRPC サービスの統合を解説する動画です。
- Stewart Lynch 氏による Swift マクロのハンズオン動画2本: Swift Macros Demystified: Build a Freestanding Expression Macro と Swift Attached Macros: Build a Real-World Member Macro from Scratch。
- 10分の Embedded Swift デモ: 加速度センサーと XIAO ESP32-C6 を使い、小型 OLED 画面上で Swift の鳥を滑空させる作例です。はんだ付け不要とのことです。
コミュニティの話題
- Swift Package Index が Apple に加わりました。引き続き OSS のままで、Swift コミュニティ向けの包括的なパッケージレジストリを目指して協働するとのことです。
- Yeo Kheng Meng 氏が Swift を Apple II に移植した話を公開しました。REPL・コンパイラ・ファイルブラウザ・エディタを備えた Swift のサブセットで、AI の支援を受けて作られています。
- Apple が Swift blog で採用事例 Migrating the TrueType Hinting Interpreter を公開しました。macOS と iOS の TrueType の hinting インタプリタを C から Swift へ書き換えたもので、平均13%高速化したとのことです。Blogダイジェスト AppleのSwift活用: TrueType の hinting インタプリタを C から Swift へ移行する もあわせて参照してください。
- Swift Ecosystem Steering Group が Networking workgroup の発足を発表しました。低レベル I/O から共通プロトコル、モダンな HTTP クライアント・サーバー API までを層状に整える、統一的なネットワークスタックに取り組みます。Blogダイジェスト Networking workgroup の発足 もあわせて参照してください。
新しいパッケージのリリース
- OkHttp の Swift バインディング: Android 上の Swift から Java の OkHttp ライブラリを使うためのバインディングで、swift-java で生成されています。
- Kiln: Swift 製の新しいドキュメントエンジンです。MkDocs ベースのサイトの置き換えを狙ったもので、公式ドキュメントで使われている DocC に加えた選択肢になります。
- Elementary UI 0.4.0: Swift アプリケーションをブラウザ上でネイティブに動かすためのフロントエンドフレームワークの新バージョンです。
Swift Evolution の動き
非同期処理・アクセサ・標準ライブラリの型に関する Proposal が動いています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
- SE-0526
withDeadline(レビュー中): Swift の非同期処理は際限なく実行され続ける可能性があり、task group や clock の sleep を使って手動で時間制限を実装するのは冗長で誤りやすい作業でした。本 Proposal は、clock の instant として指定した絶対時刻の締め切り付きで async 操作を実行し、間に合わなければキャンセルするwithDeadlineを追加します。締め切りを共有できるため、相対的な duration を呼び出しの階層に渡すときに蓄積するずれ(drift)も避けられます。 - SE-0474 Yielding Accessors(最近採択): computed property に対して mutating メソッドを呼ぶと、Swift は値を取り出して変更し書き戻すことで、その場での変更を演出します。この仕組みは
Stringのような型で不要な copy-on-write バッファの複製を招き、そもそもコピーできない non-copyable な型では実現できませんでした。本 Proposal はyielding borrowとyielding mutateを追加し、値をコピーせずに呼び出し側へ直接貸し出す形で computed property や subscript を実装できるようにします。 - SE-0529 Add
FilePathto the Standard Library(修正のうえ採択): swift-system パッケージのFilePathはプラットフォーム固有のパス構文を解釈し、正規化されたパスコンポーネントのビューを提供しますが、外部パッケージにあるために標準ライブラリ・Swift ランタイム・Foundation などのツールチェインライブラリから依存できませんでした。本 Proposal はFilePathと関連する型をSwiftモジュールに追加し、構築・分解・解決・C 相互運用のための基本機能も提供します。 - SE-0527
UniqueArray(修正のうえ採択): Swift のArrayは、copy-on-write セマンティクスや性能の予測可能性を損なわずに non-copyable な要素を格納することができませんでした。本 Proposal は新しい Containers モジュールに2つの型を追加します。あふれるとトラップする固定容量の配列RigidArrayと、自身が non-copyable であることで一意な所有権を強制しつつ動的に伸長するUniqueArrayです。
関連リンク
- 1つ前の号は Blogダイジェスト Swiftの最新情報: 2026年5月号 を参照してください。
- WWDC26 で紹介された TrueType の移行事例は Blogダイジェスト AppleのSwift活用: TrueType の hinting インタプリタを C から Swift へ移行する、Networking workgroup の発足は Blogダイジェスト Networking workgroup の発足 を参照してください。