この記事の要点
- 「What’s new in Swift」連載の2026年1月号で、Web アプリ開発に Swift を採用した開発者(Studioworks の Nick Sloan 氏)のゲスト寄稿から始まり、注目の動画、新しいパッケージのリリース、コミュニティの話題、そして Swift Evolution の動きを取り上げています。
- ゲスト寄稿では、Hummingbird 2・Soto・Elementary などを用いたサーバーサイド Swift による Web アプリ開発の実体験が語られ、安全で信頼性が高く高性能なコードを書きやすいこと、クラッシュやバグの少なさ、テンプレートを Elementary に移行した後の高い表示性能(最も重いページでも 100ms 未満)が強調されています。
- 言語面では、レビュー中の高度な Observation 追跡(SE-0506)と
borrow/mutateアクセサ(SE-0507)、最近採択された Runtime モジュールでの demangle 関数の公開(SE-0498)が紹介されています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
この号は公式の定期ダイジェストなので、ここでは Swift 利用者が押さえておくとよい注目トピックを選んで整理し、Swift Digest 内外の関連リンクを示します。網羅的な一覧は元記事を参照してください。
注目トピック
サーバーサイド Swift での Web アプリ開発(ゲスト寄稿)
今月は、Reddit でのサーバーサイド Swift に関する話題をきっかけに、Web アプリ開発に Swift を採用した開発者を招いた寄稿が掲載されています。
寄稿者の Nick Sloan 氏は、クリエイティブスタジオ向けプラットフォーム Studioworks のエンジニアリング責任者です。安全で信頼性が高く高性能なコードを書きやすいという理由から Swift を採用し、Hummingbird 2、Soto(DynamoDB の Codable サポートが優れている)、Hummingbird MacroRouting、HTML テンプレート用の Elementary を活用しているとのことです。
要点として次のような実体験が語られています。
- 20年にわたる Web アプリ開発の中で、本番環境に到達するクラッシュやバグがこれほど少ないのは初めてだった。
- テンプレートを Elementary に移行した後の性能が特に優れており、最も重いページでもブラウザに 100ms 未満で届く。
- PHP や Python に比べると立ち上がりはやや遅く、ビルド・デプロイ・チャット連携などのツールを整え直す必要があったが、それを越えた後は Python と同等の速度で、より高品質に開発できている。
サーバーサイドやクラウドでの Swift 活用については、元記事でも前年10月号(Swiftの最新情報: 2025年10月号)や Swift.org のクラウドサービス向けユースケースページが案内されています。
注目の動画・パッケージ・コミュニティの話題
- 動画: progressive disclosure をテーマにした Doug Gregor 氏の講演 On Progressive Disclosure in Swift(経験やコードベースの成熟に応じて言語機能を段階的に使えるようになるという考え方)と、Matt Massicotte 氏をゲストに迎えた NSScreencast の Billion Row Challenge ライブコーディング回が紹介されています。
- 新しいパッケージ: コードで 3D モデルを構築する 3D プリント志向の Cadova、複数のデータベースドライバで共有でき、最新の Swift 並行処理向けに設計された Feather Database、Miguel de Icaza 氏が .NET の MailKit/MimeKit 由来のメールスタックを移植した MailFoundation / MimeFoundation が挙げられています。
- コミュニティ: meta-swift を使って Raspberry Pi Zero 2 向けに Swift をビルドする Yocto 向け Embedded Linux ガイドや、SwiftCraft・try! Swift Tokyo などのカンファレンスの参加登録開始(try! Swift Tokyo は CFP も募集中)が紹介されています。
Swift Evolution の動き
Observation・所有権・ランタイムまわりの Proposal が動いています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
- SE-0506 Advanced Observation Tracking(レビュー中):
@Observableな型はプロパティの変更を自動的に追跡しますが、ミドルウェア基盤やウィジェットシステムのような高度な用途では、いつ・どの変更を観測するかをより細かく制御したいことがあります。本 Proposal は、既存のwithObservationTrackingに観測対象を制御するオプションと、まとめられた変更イベントの後で自動的に再観測を続ける継続版を追加します。 - SE-0507 Borrow and Mutate Accessors(レビュー中): プロパティの読み書きを処理するコードは、現在は値をコピーするかコルーチンを使うため、性能上のオーバーヘッドがあります。本 Proposal は新しい
borrow/mutateキーワードを導入し、プロパティが stored property の値へ直接アクセスできるようにします。これにより、コピーできない値を保持するプロパティも提供できるようになります。 - SE-0498 Expose demangle function in Runtime module(採択済み): Swift コンパイラは名前マングリングにより Swift のシンボルを
$sSS7cStringSSSPys4Int8VG_tcfCのような文字列に変換し、これがバックトレースやプロファイリングツールに現れます。人が読める形式が望ましい場面のために、本 Proposal はプロセスの外に出ることなく Swift ランタイムのデマングラを呼び出せる新しい API を導入します。
関連リンク
- 1つ前の号は Blogダイジェスト Swiftの最新情報: 2025年12月号 を参照してください。
- サーバーサイドの話題が中心だった号として、Blogダイジェスト Swiftの最新情報: 2025年10月号 もあわせて参照してください。