この記事の要点
- 「What’s new in Swift」連載の2026年2月号で、FOSDEM 2026 でのSwiftの存在感を伝えるコミュニティレポートから始まり、新しいパッケージのリリース、注目の動画、コミュニティの話題、そして Swift Evolution の動きを取り上げています。
- FOSDEM レポートでは、独自の Pre-FOSDEM フリンジイベントで11本、本編の各 DevRoom で4本のSwift関連講演が行われ、Embedded・サーバー・BSD・Android など幅広い領域でSwiftが汎用言語として勢いを増していることが強調されています。WebAssembly でSwiftアプリをブラウザ上でネイティブに動かす ElementaryUI の講演などが紹介されています。
- 言語面では、レビュー中の標準ライブラリコレクションへの
Hashable適合(SE-0514)と実行ファイルパス取得 API(SE-0513)、最近採択された高度な Observation 追跡(SE-0506)・メンバーワイズイニシャライザの可視性修正(SE-0502)が紹介されています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
この号は公式の定期ダイジェストなので、ここでは Swift 利用者が押さえておくとよい注目トピックを選んで整理し、Swift Digest 内外の関連リンクを示します。網羅的な一覧は元記事を参照してください。
注目トピック
FOSDEM 2026 でのSwift
世界最大級のオープンソースカンファレンス FOSDEM に、今年もSwiftコミュニティが参加しました。前年に続く取り組みとして、今年は独自の Pre-FOSDEM フリンジイベントを開催し、複数のプラットフォームにまたがる11本の講演を実施したほか、本編でも 各 DevRoom トラックで4本のSwift講演が行われました。
コミュニティレポートでは、Embedded・サーバー・BSD・Android など多様なプラットフォームを扱う講演と、参加者の幅広いバックグラウンド(新卒、過去の Swift メンティー、各 workgroup メンバー、Core Team メンバーなど)を通じて、Swiftが誰にとっても役立つ汎用言語として勢いを増していることが伝えられています。注目講演として、WebAssembly を用いてSwiftアプリをブラウザでネイティブに動かす方法を示した Swift in the Browser with ElementaryUI が挙げられています。Pre-FOSDEM イベントの全講演は YouTube プレイリストで公開されています。
新しいパッケージ・動画・コミュニティの話題
- 新しいパッケージ: 株式ティッカーのような文字列の検索向けに開発された高性能ファジー文字列マッチングの FuzzyMatch、Vapor / Hummingbird で GraphQL API を公開できる新パッケージ、Microsoft SQL Server 向けにモダンな並行処理で書かれたネイティブクライアント SQLClient-Swift、SwiftUI 風の宣言的な記述でターミナル UI を構築できる TuiKit(CLI 向けテーマ対応コンポーネントを提供する Noora に並ぶ選択肢)が紹介されています。また、プロセスレベルのメトリクス収集を容易にする Swift System Metrics 1.0 もリリースされました(Blogダイジェスト Swift System Metrics 1.0 の発表: プロセスレベルのモニタリング)。
- 動画: MCP を使ってエージェント駆動のアプリを構築する Building Agentic Apps with MCP in Swift や Xcode 26 のコーディングインテリジェンスを扱う code-along、Swift SDK for Android の紹介、Android・Linux・Windows でネイティブ UI を使う SwiftCrossUI、Arduino / AVR マイクロコントローラをSwiftで制御する CoreAVR + ArduinoKit が紹介されています。Swift SDK for Android については Blogダイジェスト Swift SDK for Android の発表・Swift SDK for Android を探る もあわせて参照してください。
- コミュニティ: Swiftが Google Summer of Code 2026 に参加します(学生にとって貢献の好機)。また、Tracy を使って Windows・macOS 上でSwiftアプリをプロファイリングするコミュニティ記事も紹介されています。
Swift Evolution の動き
標準ライブラリ・Observation・初期化まわりの Proposal が動いています。いずれも Swift Digest にダイジェストがあります。
- SE-0514
HashableConformance forDictionary.Keys,CollectionOfOneandEmptyCollection(レビュー中): 標準ライブラリの3つのコレクション型(Dictionary.Keys、CollectionOfOne、EmptyCollection)は、現状ではセットの要素や辞書のキーとして使えません。本 Proposal は、標準ライブラリの他の型との一貫性のため、これら3つにHashable適合を追加します。 - SE-0513 API to get the path to the current executable(レビュー中): Swiftには現在、実行中の実行ファイル自身のパスを取得するためのポータブルで信頼できる手段がありません。本 Proposal は、Swiftがサポートする全プラットフォームで一貫してこの値を取得できる新しいプロパティ
CommandLine.executablePathを標準ライブラリに追加します。 - SE-0506 Advanced Observation Tracking(採択済み):
@Observableな型はプロパティの変更を自動的に追跡しますが、ミドルウェア基盤やウィジェットシステムのような高度な用途では、いつ・どの変更を観測するかをより細かく制御したいことがあります。本 Proposal は、既存のwithObservationTrackingに観測対象を制御するオプションと、まとめられた変更イベントの後で自動的に再観測を続ける継続版を追加します。 - SE-0502 Exclude private initialized properties from memberwise initializer(採択済み): 構造体を定義すると、コンパイラは各プロパティを引数に取るイニシャライザを自動生成します。現状ではデフォルト値を持つ private なプロパティを追加すると、この自動生成イニシャライザ自体が private になってしまい、型の外側の呼び出し側を壊してしまいます。本 Proposal はこの挙動を修正します。
関連リンク
- 1つ前の号は Blogダイジェスト Swiftの最新情報: 2026年1月号 を参照してください。
- FOSDEM が話題の中心だった号として、Blogダイジェスト 見逃した方へ: FOSDEM 2025 でのメモリ安全性・エコシステム・Java 相互運用の講演 もあわせて参照してください。